帳票/文書管理

ERPの帳票、いつまで保管するの?担当者が知っておきたい文書保管期間

ERP(Enterprise Resource Planning)を構築している環境では、基幹系システム各種から情報を一ヵ所に集められるだけでなく、作成した帳票類を一元的に管理することができます。昨今は、法定保存義務のある帳票を電子的に保存してもよいという法令が整備されており、ERPで帳票管理を実施するメリットが高まっているため、ERP活用の意義も見直されています。もちろん中にはプリントする場合も多々あるでしょう。

本稿では、ERPの帳票をいつまで保管するべきなのか、担当者が知っておきたい文書保管期間についてご紹介します。

Microsoft Dynamics 365概要

文書管理期間とは?

そもそも「文書管理期間」とは何でしょうか?ビジネスでは日々さまざまな帳票が作成されていますが、中には法律によって保存期間が定められた文書が存在します。帳票によって1年~10年、あるいはそれ事情の保存期間が決められているのです。その根拠となる法令には、以下のようなものがあります。

  • 健康保険法
  • 厚生年金法
  • 国税通則法
  • 雇用保険法
  • 証券取引法
  • 消費税法
  • 商法
  • 法人税法
  • 労働安全衛生法
  • 労働基準法

これらの法令によって定められている保存期間に加えて、会社独自に設定している保存期間もあるため、ERP帳票担当者は各帳票の保存期間を、細かく把握していることが大切です。

1~2年間の保存期間が定められている

総務関連

文書名

起算日

根拠条文

臨時報告書、自己株券買付状況報告書およびそれぞれの訂正報告書の写し

内閣総理大臣に提出した日

金融商品取引法25

当直日誌、軽易な往復文書、受信・発信文書、通知書類・調査書類・参考書類など

記入日、作成日

人事関連

文書名

起算日

根拠条文

雇用保険に関する書類(雇用保険被保険者関係届出事務等代理人選任・解任届など。労働保険の保険料の徴収等に関する法律または同施行規則4による書類は3年)

完結の日

雇用保険法施行規則143

健康保険・厚生年金保険に関する書類

(被保険者資格取得確認および標準報酬決定通知書、標準報酬改定通知書など)

健康保険法施行規則34、厚生年金保険法施行規則28

3年間の保存期間が定められている

総務関連

文書名

起算日

根拠条文

四半期報告書、半期報告書およびその訂正報告書の写し

内閣総理大臣に提出した日

金融商品取引法25

官公署関係の簡易な認可・出願等の文書

出願・受領日

業務日報、社内会議の記録、軽易な契約関係書類、参照の必要性のある文書など

記録・作成日

人事関連

文書名

起算日

根拠条文

労働者名簿

死亡・退職・解雇の日

労働基準法109、労働基準法施行規則56

賃金台帳(国税通則法では7年保存を義務付け)

最後の記入をした日

雇入れ・解雇・退職に関する書類

退職・死亡の日

災害補償に関する書類

災害補償の終わった日

賃金のその他労働関係の重要書類(労働時間を記録するタイムカード、残業命令書、残業報告書など

完結の日

企画業務型裁量労働制についての労使委員会の決議事項の記録

有効期間の満了後

労働基準法施行規則24の2の3

労使委員会議事録

開催日

労働基準法施行規則24の2の4

労災保険に関する書類

完結の日

労働者災害補償保険法施行規則51

労働保険の徴収・納付等の関係書類

労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則70

家内労働者帳簿

最後の記入日

家内労働法施行規則24

派遣元管理台帳

契約完了の日

労働者派遣事業法37

派遣先管理台帳

労働者保険事業法42

身体障害者であることを明らかにすることができる書類(診断書など)

最後の記入日

障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則45

家内労働に関する帳簿

完結の日

家内労働法施行規則24

労働安全衛生関連

文書名

起算日

根拠条文

安全委員会議事録

作成日

労働安全衛生規則23

衛生委員会議事録

安全衛生委員会議事録

救護に関する訓練の記録

労働安全衛生規則24の4

危険・有害業務に従事するときの安全衛生のためのときの安全衛生のための特別教育の記録

労働安全衛生規則38

5年間の保存期間が定められている

総務関連

文書名

起算日

根拠条文

事業報告(本店備置き分。支店備置き分はその謄本を3年保存)

株主総会の1週間(取締役会設置会社は2週間)前の日)

会社法442

有価証券届出書・有価証券報告書およびその添付書類、訂正届出(報告)書の写し

内閣総理大臣に提出した日

金融取引法25

産業廃棄物管理票(マニフェスト)の写し

管理票の写しを受領した日

廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則8の26

産業廃棄物処理の委託契約書

契約終了日

廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則8の4の3

契約期限を伴う覚書・念書・協定書など

契約期間終了の日

重要な内容の発信・受信文書

発信・受信日

人事関連

文書名

起算日

根拠条文

従業員の身元保証書

作成日

身元保証二関スル法律1、2

誓約書などの種類

労働安全衛生関連

文書名

起算日

根拠条文

じん肺健康診断記録、じん肺健康診断に係るエックス線写真

作成日

じん肺法17

一般健康診断個人票

労働安全衛生規則51

有機溶剤等健康診断個人票

有機溶剤中毒予防規則30

鉛健康診断個人票

鉛中毒予防規則54

四アルキル鉛健康診断個人票

四アルキル鉛中毒予防規則23

特定化学物質健康診断個人票 ※クロム酸等は30年

特定化学物質障害予防規則40

高気圧業務健康診断個人票

高気圧作業安全衛生規則39

高圧室内業務の減圧状況の記録

高気圧作業安全衛生規則20の2

線量当量率の測定の記録

電離放射線障害防止規則54

放射性物質の濃度測定の記録

電離放射線障害防止規則55

放射線事故に関する測定の記録

電離放射線障害防止規則45

安全委員会議事録

労働安全衛生規則23

衛生委員会議事録

安全衛生委員会議事録

救護に関する訓練の記録

労働安全衛生規則24の4

危険・有害業務に従事するときの安全衛生のためのときの安全衛生のための特別教育の記録

労働安全衛生規則38

経理関連

文書名

起算日

根拠条文

監査報告 (本店備置き分。支店備置き分はその謄本を3年保存)(監査役設置会社等の場合)

株主総会の1週間(取締役会設置会社は2週間)前の日

会社法442

会計監査報告 (本店備置き分。支店備置き分はその謄本を3年保存)(会計監査人設株主総会の1週間(取締役会設置会社は2週間)前の日置会社の場合)

会計参与が備え置くべき計算書類、附属明細書、会計参与報告 (会計参与設置会社の場合。会計参与が定めた場所に備置き)

会社法378

金融機関等が保存する非課税貯蓄申込書、非課税貯蓄申告書、非課税貯蓄限度額変更申告書、非課税貯蓄異動申告書、非課税貯蓄勤務先異動申告書、非課税貯蓄廃止申告書などの写し

これらの申告書、退職等に関する通知書等の提出があった年の翌年

所得税法施行令48、所得税法施行規則13、租税特別措置法施行令2の21、租税特別措置法施行規則3の6

7年間の保存期間が定められている

労働安全衛生関連

文書名

起算日

根拠条文

粉じん濃度の測定記録、測定結果の評価記録

作成日

粉じん障害防止規則26、26の2

じん肺健康診断記録、じん肺健康診断に係るエックス線写真

じん肺法17

経理関連

文書名

起算日

根拠条文

取引に関する帳簿(仕訳帳、現金出納帳、固定資産台帳、売掛帳、買掛帳など)※証憑書類のうち取引に関する事項(法人税法施行規則の別表22に定める記載事項の全部または一部)を帳簿に記載することに代えて、記載されている書類を整理保存している場合の書類を含む

帳簿閉鎖日および書類作成日・受領日の属する事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日(当該事業年度分の申告書提出期限の翌日)

法人税法施行規則59、67

決算に関して作成された書類(上に挙げた、会社法で10年保存が義務づけられている書類以外)

現金の収受、払出し、預貯金の預入れ・引出しに際して作成された取引証憑書類(領収書、預金通帳、借用証、小切手、手形控、振込通知書など)

現金の収受、払出し、預貯金の預入れ・引出しに際して作成された取引証憑書類(領収書、預金通帳、借用証、小切手、手形控、振込通知書など

有価証券の取引に際して作成された証憑書類(有価証券受渡計算書、有価証券預り証、売買報告書、社債申込書など

取引証憑書類(請求書、注文請書、契約書、見積書、仕入伝票など)

電子取引の取引情報に係る電磁的記録(取引に関して受領または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項の記録)

電子帳簿保存法施行規則8

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、配偶者特別控除申告書、保険料控除申告書

法定申告期限

国税通則法70~73

給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書

課税関係終了の日

源泉徴収簿(賃金台帳)

法定申告期限

課税仕入等の税額の控除に係る帳簿、請求書等(5年経週後は、帳簿または請求書等のいずれかを保存)

課税期間末の翌日から2ヶ月を経過した日

消費税法30、消費税法施行令50、消費税法施行規則15の3

資産の譲渡等、課税仕入、課税貨物の保税地域からの引取りに関する帳簿

課税期間末の翌日から2ヶ月を経過した日

消費税法58、消費税法施行令71

10年以上の保存期間が定められている

総務関連

文書名

起算日

根拠条文

株主総会議事録 (本店備置き分。支店備置き分はその謄本を5年保存)

株主総会の日

会社法318

取締役会議事録

取締役会の日

会社法371

監査役会議事録

監査役会の日

会社法394

委員会議事録 (指名委員会、監査委員会、報酬委員会)

委員会の日

会社法413

重要会議の記録

記録作成の日

 

満期または解約となった契約書

満期または解約の日

 

製品の製造、加工、出荷、販売の記録 ※民法724の規定では、20年が期限

製品の引渡し日

製造物責任法5、6

労働安全衛生関連(保存期間30年)

文書名

起算日

根拠条文

クロム酸等の空気中における濃度の定期測定記

作成日

特定化学物質障害予防規則|36

特別管理物質についての作業の記録

当該事業場において常時当該作業に従事することとなった日

特定化学物質障害予防規則|38の4

放射線業務従事者の線量の測定結果記録

※当該記録を5年保存した後、厚生労働大臣が指定する機関に引き渡すときはこの限りでない

作成日

電離放射線障害防止規則9

電離放射線健康診断個人票

※当該記録を5年保存した後、厚生労働大臣が指定する機関に引き渡すときはこの限りでない

電離放射線障害防止規則57

特別管理物質を取り扱う業務に携わる労働者の特定化学物質健康診断個人票

特定化学物質障害予防規則40

経理関連

文書名

起算日

根拠条文

計算書類および附属明細書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表

作成した日

会社法435

会計帳簿および事業に関する重要書類(総勘定元帳、各種補助簿、株式申込簿、株式割当簿、株式台帳、株式名義書換簿、配当簿、印鑑簿など)

帳簿閉鎖の時

会社法432

永年保存が定められている

総務関連

文書名

起算日

根拠条文

定款

法律等による保存年限はないが、文書の性格上、永久保存が必要と考えられるもの(会社法31、特許法67など)このほか、次の文書を永久保存している会社もある。

●株主総会議事録

●取締役会議事録(役員会議事録)

●稟議書、重要決裁文書

●財務諸表および附属明細書、税務申告書

●固定資産台帳および固定資産の取得・売却に関する書類

●顧客名簿

●印鑑登録簿

●外部団体加入・脱退関係書類など

株主名簿、新株予約権原簿、社債原簿、端株原簿、株券喪失登録簿

登記・訴訟関係書類(権利証など)

官公庁への提出文書、官公署からの許可書・認可書、通達などに関する重要な書類

知的所有権に関する関係書類(特許証や登録証、特許料や登録料の受領書など)

社規・社則およびこれに類する通達文書

効力の永続する契約に関する文書

重要な権利や財産の得喪等に関する文書

社報・社内報、重要刊行物

製品の開発・設計に関する重要な文書

人事関連

文書名

起算日

根拠条文

重要な人事に関する文書

法律等による保存年限はないが、文書の性格上、永久保存が必要と考えられるもの

電子データとしての保存に注意!

いかがでしょうか?日々作成される帳票にはそれぞれ法令によって定められた保存期間があり、これらの帳票を適切に保管することはコンプライアンスの観点からもとても大切です。ただし、電子データとして保存する際は十分に注意してください。文書の中には電子データ保存が認められていないものもあるため、すべての帳票類を電子化できるわけではありません。電子データとして保存できる帳票に注意しつつ、しっかりと帳票を管理していきましょう。

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