製造業におけるAR活用の具体例

 2021.04.19  BizApp チャンネル編集部

生産性の向上が求められる製造業において、近年「AR」の活用が積極的に進められています。製造業のIT部門担当者であれば、ARでどのようなことができるのか、どのようなメリットがあるのかを詳しく知っておきたいところです。そこで本記事では、製造業にARを導入するメリットや、ARの導入事例について詳しく解説していきます。

製造業におけるAR活用の具体例

製造業におけるAR活用の実態

あらゆる業界でITソリューションの活用が進んでいますが、とりわけ製造業では、ARを活用した現場の変革が進んでいます。まずはARの概要と、製造業でAR活用が広まっている背景について解説します。

そもそもARとは

「AR」とは「Augmented Reality」の略称で、日本語では一般的に「拡張現実」と訳されます。実際の景色や地形などの画像や映像にCGを合成し、現実の世界にバーチャル空間を重ねるというコンピュータ技術です。実際に現実を変化させるわけではなく、現実感を変化させるので、「拡張現実感」とも呼ばれます。たとえば、一大ブームを巻き起こしたスマホ用ゲーム「ポケモンGO」は、AR技術の代表格です。また、プロフィール写真に耳やヒゲを付けたりするスマホ向けサービスも、AR技術が活用されています。

ARは、しばしば「VR(Virtual Reality)」とセットで語られます。VRは、そのまま「バーチャルリアリティ」や「仮想現実」と訳され、ARと同じく視覚情報を利用します。両者の違いは、ARが現実世界に合成した視覚情報を重ねて表示させる拡張型であるのに対し、VRは仮想空間を独立させ、閉じたスクリーン空間にリアリティを感じさせる合成映像を投影する独立型である点です。端的にいえばARは現実の延長、対するVRは非現実の世界を限りなく現実に近づけるものであるため、技術の方向性は対照的といえます。

製造業で利用が進むAR

現実世界にデジタルデータを重ね合わせるAR技術は、スマホやタブレット端末のアプリを利用し、難しい操作をせずに誰でも体験できるのが魅力です。エンターテイメントとして楽しめるAR専用グラスや、頭に装着するヘッドマウントディスプレイ(HMD)製品なども登場しています。

また、AR技術を業務に活用するケースも増えています。たとえば建築・土木業界では、危険を回避する作業前の仮想体験や、現場に潜入させたロボットやドローンをARで監視しながらコントロールするなどの試みも行われています。

現在、製造業は深刻な人手不足の問題を抱えており、その中で製品の魅力を高めるためには、技術者のスキルや生産性の向上を目指さなければなりません。複雑化する製品の保守やメンテナンスに対応し、高まる顧客の期待値に応え、ますます激化する市場で存在感を示していくことも必要です。人手不足の状態で無理な経営を続けていると、リコールや不正検査のリスクもあります。AR技術は、製造業のこのような課題解決に有効とみなされ、導入が進んでいるのです。

製造業にARを活用するメリット

AR技術は特に製造業において、導入の恩恵が大きいとされます。ここでは、製造業の現場や保守・メンテナンスサービスでARを活用するメリットを見ていきましょう。

コストの削減

製造業はIoTの普及などにより、高度なIT機器の導入の必要性に迫られ、日常の業務が複雑化する一方です。それにもかかわらず、慢性的な人手不足に悩まされており、現場では技術の継承や新人の教育が難しくなっています。

AR技術の活用により、人手不足に悩む製造現場でも、作業にかかる時間や費用を削減できます。具体的には、AR専用のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を利用し、業務に必要な技術のトレーニングを行うことが可能です。AR技術で実際の作業環境を作り出せば、より実践的なトレーニング体験となるでしょう。

また、ディスプレイに作業手順や指示を表示すれば、新人研修のために先輩が付きっ切りで教えなくても、失敗せずに作業を覚えていけます。従業員が新人教育に割く時間を減らし、本来の業務に集中できるようになるため、結果としてコスト削減につながり、技術者のレベル向上にも役立ちます。

さらに、慣れないタスクを正確に完了させるAR技術のトレーニングにより、製造業のスキルギャップも改善します。言葉が伝わりにくい外国人労働者も、何度も繰り返すトレーニングによって技術の習得が可能です。

生産性の向上

従来の製造現場では、作業マニュアルや手順を記載した紙媒体に目を通しながら、進捗を確認しつつ保守・管理業務に当たっていました。ARに対応したゴーグルなどを装着すれば、作業マニュアルや手順書などを目の前に投影できるため、作業中にその都度、紙の資料を確認する必要がありません。ハンズフリーの状態で情報を確認しつつ作業を行えるため、業務効率が上がります。事前にシステムを構築し、AR技術で次に行うべき作業を表示したり、特定の部品に必要な工具や特定の機械に操作手順書を表示したりすることも可能です。

また従来、設備のメンテナンスは、長年の経験を持つ技術者が目視によって行うのが一般的でした。AR技術と生産設備を連携することで、メンテナンスに必要な情報を可視化し、メンテナンス業務の効率化を図れます。これにより、従来における製造現場の生産ラインとメンテナンス業務の効率を格段に高め、企業活動の生産性向上につながります。

遠隔地での作業指示が可能になる

AR専用スマートグラスやゴーグルなどのデバイスを利用すれば、遠隔地からでも作業指示を出して、業務がスムーズに行えるようサポートできます。遠隔地にいる熟練の技術者が現場の作業者とつながり、距離や空間の制約を受けずに都度、的確な指示を出せるようになります。これにより、1人の専門技術者が遠隔地にある複数の作業現場に立ち会うことも可能です。

遠隔地からの作業指示が可能となれば、技術者の人件費や時間的コストを削減できます。作業員が不明点を見つけた場合は、スピーディに問題を解決し、製造現場のトラブルにいち早く対応できるため、トラブルシューティングの精度も高まります。保守サービスの場合、初回訪問で解決できる確率が上がり、再訪問件数が減らせるため、出張費用も削減できるでしょう。

製造業におけるAR活用事例

ARデバイスの性能が進化したことにより、人手不足に悩む製造業界では、大手を中心にARの導入が進んでいます。以下では、実際にARを導入した2社の事例をご紹介します。

事例1: 富士通

富士通の沼津工場は、冷却水ポンプや冷凍機といった自社工場設備の保守・点検業務において、ARソリューションを導入しました。自社で実践している点検ノウハウから、独自のARシステムを構築しています。紙や技術者のスキル・勘に頼っていたマニュアルやデータ、トレーニングを作業ナビゲーションのARに切り替えました。これにより、作業内容を映像と音声で指示できるため、新人でもミスなく作業が行えるようになっています。

また、作業の漏れを防ぐため、設備点検チェックシートを現場のQRコードに収め、AR機器で読み取ることで、過去の点検記録をグラフ化できるようにしました。点検記録を入力する必要がなく、データベース化により情報の共有化も実現しています。ARにより保守・点検業務の全体的な効率化を成功させた、国内の模範的な事例といえるでしょう。

事例2: Tenaris

Tenaris(テナリス)社は、世界有数の鋼管メーカーです。アルゼンチンの最先端工場で、整備メンテナンスや運用管理にARソリューションを導入しています。AR導入の主な目的は、保守作業の効率化と人的ミスの削減です。作業現場に記されたQRコードをAR機器で読み取り、デバイスから収集したデータにより、保守点検が必要な場所をアイコンで示せるようになりました。

規模の大きな工場では点検項目の数が多く、保守点検に時間を要し、ケアレスミスも生じます。しかし同社では、AR機器の導入により作業内容が表示されるようになったため、作業の大幅な効率化と人的ミスの削減が実現しています。工場の組立ラインは完全自動化が世界的な流れとなっているため、ARソリューションによる保守・整備メンテナンスは今後、製造業界のスタンダードになると予測されています。

まとめ

慢性的な人手不足を抱える製造業において、人的コストを削減しつつ生産性を高める手段として、ARは欠かせない技術です。クラウドビジネスアプリケーション「Microsoft Dynamics」は、企業に必要な業務アプリケーションを包括的に提供し、ビジネスの成長に対応します。企業の生産性向上に役立つため、ぜひご活用ください。

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