会社が存続できる理由は、その商品やサービスを買ってくれる顧客がいるからです。会社は、顧客ごとにどの商品やサービスをどれくらい買ってくれたのか?いつ取引が発生したのか?顧客企業の担当者は誰か?などの情報を管理するのが当たり前です。これを俗に顧客管理と呼ぶわけですが、そうした情報管理だけにとどまっている企業は決して少なくありません。
皆さんの会社ではどうでしょうか?情報を管理するだけに留まっていないでしょうか?あるいは、日常の顧客管理をビジネスに繋げて商品やサービスの品質向上や、顧客満足度へと貢献することができているでしょうか?
本稿では、知っているようで意外と知らない、顧客管理の基本について解説いたします。
顧客管理とは?
今日、多くの企業が顧客管理に取り組んでいますが、その定義は実にさまざまです。単に顧客情報を管理することを指す場合もあれば、その上でビジネスの成長に貢献するような活動を指す場合もあります。どちらも間違っていませんし、企業ごとに自分たちにとって適切な顧客管理を定義すればよいのです。
しかし、ビジネスの世界に身を置いている以上、単に顧客情報を管理するのはもったいないというのが実情です。商品やサービスの品質改善、顧客満足度アップは顧客管理で実現することができます。
よって、現代ビジネスにおける顧客管理とは、顧客情報を管理して、それらの情報から顧客の課題や心情を読み取り、これから会社が進むべき方向性を定めたり、品質改善、顧客満足度アップ、ひいては利益拡大に繋がったりするような取り組みを指しています。
顧客“関係”管理という考え方
近年特に浸透しているのが、企業と顧客の関係を維持・向上することに焦点を当てた「顧客関係維持」という考え方です。CRM(Customer Relationship Management)戦略、とも呼ばれています。
ビジネスにおいて、企業が顧客と良好な関係を築くことで顧客満足度アップや利益拡大が果たされることは、多くの調査ですでに明らかになっています。たとえば営業において、担当者の売上実績は顧客とコミュニケーションを取る時間に比例してアップする、という話は有名ですね。
これまで意識してはいなかったものの、当然といえば当然のことです。ビジネスを行っているのは機械ではなく人間同士ですし、そこには少なからず私情が入り込みます。誰だって自分が気に入った人間とビジネスを交わしたいですし、日々気持ちよくビジネスがしたいと考えているはずです。
従って、顧客関係管理を実施して顧客と良好な関係を構築・維持できれば、ビジネスの拡大は難しくありません。
顧客と良好な関係を構築するには?
「良好な関係」といっても、世間話をたくさんして毎週のように飲みに行き、親睦を深めるのが顧客関係管理ではありません。ビジネスの世界ではそうした付き合いを大切にする場合もありますが、ここでいう良好な関係とは「顧客のことを深く理解し、顧客が欲しているものを提供し、顧客もそれを受け入れている」という信頼関係のことです。
あなたは製造系中小企業の経営者で、生産管理プロセスが分断的で生産リードタイムが長期化しているという経営課題を持っているとします。解決のためには、仕入・在庫・製造・販売・出荷のプロセスを統合的に管理するシステムを導入し、リーンな(極力無駄を排除した)生産管理を可能にする必要があります。
生産管理システムを1から構築するのには膨大な時間とコストがかかることから、あなたはパッケージソフトウェア製品を導入し、自社要件に合わせてちょっとしたカスタマイズを加えたいと考えました。そして製品を2つピックアップし、各ソフトウェアベンダーに相談します。
ベンダーAはあなたの話を聞いて、「わが社の生産管理システムなら問題をすべて解決できます!あれもこれも必要な機能は揃っていますし、カスタマイズも問題ありません!」と自信満々に説明しました。そしてベンダーBは、「当社の生産管理システムならあなたが求める要件に対応できます。しかし、話を聞く限り〇〇のような課題を持っているのではないか?と感じたのですが、いかがでしょうか?そうなると、当初予定しているカスタマイズでは経営課題をうまく解決できない可能性があります。」と説明してくれました。
ベンダーAもベンダーBも言っていることは事実ですし、無理に言いくるめて製品を販売しようとはしていません。しかし、ベンダーBはあなたが抱えている潜在的なニーズに意識を傾けて、顧客に寄り添った考え方ができていると言えます。多くの方はベンダーBを信頼して仕事を任せますし、その後良好な関係を築ける可能性も高いでしょう。
このように、顧客関係管理を実施するためにはまず「顧客に寄り添って考える」という姿勢がとても大切です。顧客の口から語られる表面的なニーズだけを見るのではなく、会話の中や現状から潜在的なニーズをくみ取り、顧客が本当に解決したがっている課題を明確にして、その上で最適なソリューション(解決策)を提案するのが、顧客との信頼関係を築くことに繋がります。
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顧客管理がExcelではダメな理由
顧客管理を実施するにあたり、多くの企業がExcelを使っているます。Excelは大変すばらしいツールですが、実は顧客との関係性を管理するには、いくつか問題があります。
まず、Excelのメリットはほとんどの企業で標準的に導入していることから、追加コストが発生しないことです。普段から慣れ親しんだツールを使用するということで、教育コストも少なく済むでしょう。
一方、Excelのデメリットは複数人でファイルを同時に更新できない点にあります。たとえば営業担当者Aが顧客情報を入力している最中に、顧客担当者Bはそのファイルを開くことができません。後から入力しようと考えても、忘れてしまうことは多いですし、もしも営業担当者Aがファイルを開きっぱなしなら他すべての営業担当者に迷惑がかかります。
簡単に削除できたり、古いファイルで誤って上書きできたり、メールやUSBメモリなどで簡単に持ち出せる点もExcelのデメリットです。大切な顧客情報を失う、情報漏えいにつながる危険性が大いにあります。
さらに、同じようなファイルが乱立して、どれが最新版なのか分からなくなってしまう状況も考えられます。このように、Excelで顧客管理を行うにはさまざまなデメリットがあるので、適切なシステムを導入するのがベターなのです。
CRMシステムを導入して、顧客情報を集約しよう!
顧客管理を実施するにあたり、やはりCRMシステムが必要になります。これまでExcelファイルに入力していたあらゆる顧客情報の管理先をCRMシステムに移行し、システム上での統合管理を行います。その上で、CRMシステムが持つ顧客分析機能を使ったり、独自の分析を行ったりして顧客について深く理解し、良好な関係を構築していきましょう。単なる顧客情報の管理から脱却して、顧客関係管理を実現し、商品やサービスの品質改善、顧客満足度アップなどを実現していきましょう。
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