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プロジェクト会計にERPを使う理由とは?メリットをわかりやすく解説

プロジェクト会計にERPを使う理由とは?メリットをわかりやすく解説

プロジェクトの赤字は当然ながらないほうがよいに決まっています。一部の大企業では赤字プロジェクトを前向きに捉えて補填予算を組む(次なる飛躍に向けて、あえてリスクを取る)という場合もありますが、あくまで資本力の高い大企業ならではでしょう。中小企業やベンチャー企業にとっては、一度の赤字プロジェクトが致命傷になりかねません。

しかし、現実にはプロジェクトが完了して蓋を開けてみれば赤字だったというケースは少なくないでしょう。この原因の多くはプロジェクト会計を実施しておらず、プロジェクトの収支を管理できていないことです。

プロジェクト会計は企業独自に取り組むことができる管理会計の一種なので、プロジェクト担当者が工夫しながら独自の仕組みで行うことも多いでしょう。しかしながら、ERPを活用するとより高い精度でプロジェクト会計を実施することができます。今回は、その理由についてご紹介しましょう。

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プロジェクト会計とは?

一般的な会計は財務会計と管理会計に分かれます。財務会計とは経営情報から貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)を中心とした財務諸表を作り、外部にその情報を開示するための会計業務です。企業は投資家や株主に対して経営情報を開示する義務があり、そのための業務が財務会計になります。

一方、管理会計とは自社の経営状況を適切に把握して経営計画や事業計画に反映するための会計業務です。管理会計は実施する義務がないため、企業ごとにルールが違うとともに、実施していない企業もあるでしょう。

ではプロジェクト会計はどうかというと、分類としては管理会計に該当します。実施する義務はありませんし特定のルールも存在しません。個々の裁量による「プロジェクト収支を管理するための会計業務」なのです。共通していえる取り組みとしては、プロジェクトにかかっている原価を計算してプロジェクト単位での収支のバランスを保つことです。

プロジェクトにかかる主な原価は次のようなものです。

  • 直接材料費
    主要材料費(原料費)、購入部品費
  • 直接労務費
    直接賃金(必要ある場合には作業種類別に細分する)
  • 直接経費
    外注加工費、間接材料費、補助材料費、工場消耗品費、消耗工具器具備品費
  • 間接労務費
    間接作業賃金、間接工賃金、手待賃金、休業賃金、給料、従業員賞与手当、退職給与引当金繰入額、福利費(健康保険料負担金等)
  • 間接経費
    福利施設負担額、厚生費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、電力料、ガス代、水道料、租税公課、旅費交通費、通信費、保管料、棚卸減耗費、雑費

原価計算基準より抜粋)

プロジェクト会計は管理会計とのつながりが大切

プロジェクト会計へ取り組むにあたって大切なことは、管理会計と紐づけることです。例えばソフトウェア開発会社の収益源はほとんどがプロジェクトから発生しています。そのため、プロジェクト会計を実施することで自然と管理会計が実施され、企業の経営状況を可視化できます。ただし問題もあります。

それが「プロジェクトごとに会計ルールが違う」という点です。初歩的なプロジェクト会計ではExcelで管理されることが多いですが、そこではプロジェクト会計担当者ごとに会計方法が違うことも多くなります。この問題はルールを設定しても解決が難しい傾向にあります。Excelでの管理では自由度が高いため、ルールを逸脱して自身がやりやすいように会計してしまう人がいたり、入力フォーマットを決めても解釈の違いでばらつきが出てしまったりするからです。

結果として、プロジェクトごとに異なる会計データを収集しても、それを統合し意味あるデータとして可視化できるように加工するだけでもかなりの時間を費やします。そのため、企業としての会計管理はリアルタイムな会計情報を確認できず、さらにそれに基づいて意思決定を下すと間違った判断をしかねません。

だからこそ、プロジェクト会計は管理会計とのつながりを意識し、そのルールを設定したりプロジェクト会計のためのツールを導入することが大切です。

プロジェクト会計に特別な仕組みは要らない

プロジェクトごとに会計ルールが違うという問題を解消するために、特別な仕組みを用意する必要はありません。適切なツールを導入すれば、厳しいルールを設定しなくても、適切なプロジェクト会計が実施できます。そのためにERP(Enterprise Resource Planning:エンタープライズリソースプランニング)があると、プロジェクト会計のための基盤を簡単に導入できます。

ERPとは「統合基幹業務システム」のことであり、さまざまな基幹業務を担当するシステムを統合したプラットフォームです。例えばマイクロソフトが提供するDynamics 365は次のようなシステムを統合しています。

  • Dynamics 365 Sales: 営業チームの効率化と顧客関係強化を支援するCRMツール
  • Dynamics 365 Marketing: 効果的なキャンペーン施策と認知度向上を支援するマーケティングツール
  • Dynamics 365 Customer Service: 顧客満足度向上と迅速なサポート提供を実現するカスタマーサービスツール
  • Dynamics 365 Field Service: 現場作業員の効率化と顧客満足度向上を支援するフィールドサービスツール
  • Dynamics 365 Operations: 製造業向けに、サプライチェーン全体を管理するERPツール
  • Dynamics 365 Finance: 財務会計、管理会計、プロジェクト会計などを統合する財務管理ツール
  • Dynamics 365 Commerce: 小売業向けのECプラットフォーム
  • Dynamics 365 Human Resources: 人事管理、採用、福利厚生などを支援するツール

企業はこれらのアプリケーションを統合的に導入したり、特定のアプリケーションを導入することができます。もちろんプロジェクト会計を実施するための機能も備わっているため、特別な仕組みやルールを作らずとも一貫した管理会計が行えます。

ERPと通常の会計ソフトの違い

ERPと通常の会計ソフトの違い

ERPは、会計管理(販売、購買、生産)、在庫管理、人事など、会社の基幹業務を一つのシステムでまとめて管理するものです。異なる部門でバラバラだった情報を一元化することで、情報共有や連携がスムーズになり、業務全体の効率化が期待できます。

一方で会計ソフトは、請求書の作成・送付、仕訳入力、決算書作成など、経理・会計部門の日常業務を効率化するツールです。手作業によるミスを減らし、作業時間を短縮することで、経理担当者の負担を軽減できます。

ERPと通常の会計ソフトのどちらを使うべきか

ERPと通常の会計ソフトのどちらを使うべきか

ERPと通常の会計ソフトは、どちらも企業の財務管理に役立つツールですが、それぞれ得意分野と機能が異なります。どちらを選ぶべきかは企業の規模や業務内容、予算などによって異なりますが、ERPと会計ソフトを利用するケースの例を紹介します。

ERPの導入がおすすめのケース

ERPは、会計ソフトに比べて多くの機能が備わっています。複雑な管理を行っている企業や複数拠点を持っている大企業に比較的向いているツールです。

  • 複数の拠点や部門を持つ企業
  • 販売、生産、在庫管理など、複数の部門で連携が必要な企業
  • 複雑な財務管理や分析機能を求める企業
  • 将来的に事業拡大を予定している企業

ERPは、会計だけでなく、販売管理、生産管理、在庫管理、人事管理など、複数の業務を統合的に管理できるシステムです。そのため、部門間の連携がスムーズになり、データの二重入力やミスが減らせます。また、複雑な財務管理や分析機能も備えているため、経営層が的確な判断を下すための情報も得られます。

会計ソフトの導入がおすすめのケース

会計ソフトのメリットは、ERPに比べて導入コストが抑えられる点です。クラウドシステムの導入を考えているが、スモールスタートしたいという中小企業に向いているツールです。

  • 規模が比較的小さな企業
  • 会計業務に特化した機能を求める企業
  • 導入コストを抑えたい企業
  • とにかく早く会計ソフトを導入したい企業

会計ソフト単体の場合は、ERPを導入するよりも導入にかかるコストが抑えられます。加えて、ERPよりも機能が限定される分、会計業務に特化した機能が充実しているので、経理担当者は効率的に業務を進めることができます。会計のみに課題がある場合は、ERPの導入よりも、会計ソフトを単体で導入する方が効率的かつコスト面でも有効でしょう。

ERPの種類とそれぞれの特徴

ERPの種類とそれぞれの特徴

ERPシステムは、オンプレミス型とクラウド型の2種類に分けられます。
リモートワークの普及や電子帳簿保存法の改正などの理由から、大企業だけでなく中小企業でもクラウド型ERPを導入する企業が増えています。ここでは、オンプレミス型とクラウド型、それぞれの特徴を紹介します。

インストール(オンプレミス)型ERP

インストール型ERPは、自社のサーバーにソフトウェアをインストールして使用するERPです。セキュリティレベルが高く、システムを自由にカスタマイズできる点がメリットです。また、データの所有権が企業にあるため、データの管理や運用について自由度が高いというメリットもあります。

しかし、クラウド型と比べて、導入コストが高くなる点や自社でアップデート対応やメンテナンス対応、障害発生時の対策をとる必要があるなどのデメリットもあります。

クラウド型ERP

クラウド型ERPは、インターネット経由で利用するERPです。利用した分だけ料金を支払う従量課金制のため、無駄な運用コストを削減できます。そして、導入コストが低く、すぐに利用を始められる点がメリットです。

また、サーバーの運用やメンテナンスはベンダーが行うため、ITリソースが少ない企業でも導入しやすいのが特徴です。場所や時間を選ばずに利用できるため、これからテレワークやリモートワークを始めたいという企業にも適しています。

クラウド型ERPを利用するメリット

Dynamics 365はクラウド型のERPです。企業はブラウザ経由でシステムを利用するため、インターネット接続環境とパソコンがあれば導入できます。クラウド型ERPはプロジェクト会計をスムーズに取り入れられるだけでなく、以下のようなメリットもあります。

①インフラ調達が不要

通常、ERPのような大規模なシステム環境を構築するためには新たなインフラ調達や構築が欠かせません。初期投資のほとんどはこのインフラにかかるといっても過言ではないくらいです。一方クラウド型ERPは特別なインフラは不要なので、調達にかかるコストや期間を大幅に削減できます。

②運用が楽になる

ERPでよく問題視されるのがシステム運用です。大規模なシステムを運用するためにはそれ相応のリソースが必要です。それに対しクラウド型ERPはベンダー側がシステム運用を行うため、ユーザー企業はアカウント管理やセキュリティ管理に徹底して運用が行えます。運用に割くリソースが従来よりも少なくなるため、その分のリソースをさまざまな所に配賦できるでしょう。

③いつでもどこでも経営状況を可視化

クラウド型ERPはブラウザ経由で利用するシステムなので、アクセスする場所や端末を選びません。例えば外出中の経営者がリモート環境でクラウド型ERPにアクセスして、経営状況を確認することもできます。もちろん、営業や経理などの部門ユーザーも場所や端末を選ばない利用ができるため、従来のシステム環境に比べて業務効率が格段に上がるでしょう。

今後プロジェクト会計に取り組もうとしている企業、既に取り組んでいるが上手くいっていないという企業は、この機会にクラウド型ERP並びにDynamics 365でのプロジェクト会計にぜひご注目ください。

ERPの選び方のポイント

ERPの選び方のポイント

ERPシステムは、会計業務だけでなく、企業全体で使用する業務統合ソフトです。導入することで、各部門でバラバラだったデータや作業を統一し、効率化を図ることができます。しかし、数多くのERPシステムが存在するため、自社に最適なものを選ぶのは容易ではありません。そこで、ここではERPシステムを選ぶ際のポイントを3つご紹介します。

自社で効率化したい業務への対応の有無

ERPシステムを選ぶ際には、まず自社で効率化したい業務を明確にすることが重要です。例えば、経理部門の業務効率化を目的としている場合は、会計・財務機能が充実したシステムを選ぶ必要があります。また、販売部門の業務効率化を目的としている場合は、顧客管理・販売管理機能が充実したシステムを選ぶ必要があります。

多くのERPシステムは、複数の業務に対応していますが、得意とする分野はそれぞれ異なります。そのため、自社のニーズに合致した機能を備えているシステムを選ぶことが重要です。システム選定前に、自社の業務内容を洗い出し、どのような機能が必要なのかを整理しておきましょう。

サービス内容とコストのバランス

 

ERPシステムは、導入費用やランニングコスト、保守費用など、多額のコストがかかります。そのため、コスト面も重要な検討ポイントとなります。

システムの機能や性能だけではなく、導入後のサポート体制やアップグレード費用なども考慮する必要があります。一般的に、クラウド型はオンプレミス型と比較すると、初期費用を抑えられる一方、ランニングコストがかかります。自社の予算とニーズに合ったサービス形態を選ぶことが重要です。

複数のシステムを比較検討する際には、機能だけでなく、サービス内容とコストのバランスをしっかりと見極めましょう。

セキュリティ対策の充実具合

ERPシステムには、企業の重要な情報が集約されます。そのため、セキュリティ対策が十分に施されているシステムを選ぶ必要があります。具体的な確認するべき機能は、システムの認証機能やアクセス制御機能、データ暗号化機能などです。

近年は、サイバー攻撃の手口も高度化しています。万が一、システムに不正アクセスが発生した場合に備えて、データのバックアップ体制なども考慮しておくことが重要です。ERP導入前に、定期的な脆弱性診断やセキュリティアップデートの実施など、適切な対策が講じられていることを確認しましょう。

まとめ

ERPシステムは、プロジェクト会計だけでなく、会計・経理、在庫管理、人事管理など、幅広い業務に対応しています。そのため、複数のプロジェクトを運営している企業のプロジェクト会計に、ERPシステムは、最適なツールといえるでしょう。

ERPシステムを導入することで、プロジェクトに関わるすべての情報を一元管理できます。これにより、情報共有や分析が容易になり、プロジェクトの進捗状況を常に把握することができます。また、自動化機能により、手作業によるデータ入力や集計作業を大幅に削減できます。

情報の一元管理、自動化機能の活用によりプロジェクト内のリソースの有効活用が可能になります。プロジェクト会計に課題を抱えている企業は、クラウド型ERPの導入を検討しましょう。

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