CTOに聞く「3つの壁」を取り払う マイクロソフトの技術が目指す未来

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 2017.08.28  Dynamics 365編集部

CTOに聞くマイクロソフトの技術の先にあるもの

 マシンが人間のように思考して答えを導き出す「AI(Artificial Intelligence)」、ありとあらゆるモノがネットワークにつながる「IoT(Internet of Things)」、仮想の3次元空間があたかも目の前にあるかのように表現できる「VR(Virtual Reality)」や「AR(Augmented Reality)」など、一昔前には夢のようだった最先端技術の活用が進み、今や私たちのビジネスの成功や成長に直結するほどになった。近代企業は、多種多様な技術のどれをどのように取り込むか、どのような方向から活用するか、先端技術への戦略が試されている時期にあると言っても過言ではないだろう。

 マイクロソフトは、そうした先端技術の研究・開発を行うと同時に、企業ITへの応用についても積極的に取り組み、最新のクラウドビジネスアプリケーション「Microsoft Dynamics 365」へと反映させている。同社の先端技術は、すでに私たちのビジネスへ応用できる状態に整っており、今も進化を続けている最中だ。

 マイクロソフトの先端技術は何を目指しているのか、どのような状況にあるのか、日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者を務める榊原彰氏に詳しく伺った。

近代ビジネスを阻害する3つの壁

 よく知られるように、マイクロソフトは古くから企業向けシステムの開発を行っており、OSやハイパーバイザーなどのインフラからアプリケーションに至るまで、極めて広い範囲のITを提供している。非常に多くの企業が、マイクロソフトのシステムを活用して、ビジネスを行っているのは周知の事実だ。

 「私たちのビジネスは、ツールの壁、グローバリゼーションの壁、ロケーションの壁という『3つの壁』に成長を阻まれています。マイクロソフトの技術は、いわゆる先端技術であるかどうかにかかわらず、企業ITが停滞化する原因となっているこれらの壁を取り払うことを目指して開発されています」(榊原氏)

「ツールの壁」には、2つの要素がある。

 まず1つは、モバイルデバイスやソフトウェアなどの環境によって、利用できるアプリケーションや機能が限定されてしまうことだ。エンドユーザーによって利用できるITとできないITがあるのでは、ビジネスを円滑に進めることは難しい。

 もう1つは、特定のツールに依存してしまうことだ。ある優秀なアプリケーションがあったとしても、いずれかのベンダーの特定のデバイスでないと利用できないとすれば、これもビジネスが遅滞する原因となる。

 幅広い環境に適応し、すべてのユーザーが分け隔てなく利用できるITが望ましい。

 「グローバリゼーションの壁」にも2つの要素がある。1つは言語、1つは時間だ。

 言語の違いは、多くのビジネスパーソンにとって鬼門とも言える要素である。複数の言語を母国語と同じように使えるユーザーは、非常に少ないというのが現状だろう。言語の壁があるために、なかなかグローバルにビジネスを展開できない企業も多いはずだ。

 グローバルにビジネスを展開し始めると、時間の制約が厳しいことに気づく。生活リズムがまったく違う2つの地域で、メールや電話などの従来の技術でスムーズにコミュニケーションを取ることは難しい。円滑なビジネスを実現するには、最新の“コラボレーション技術”を活用する必要がある。

 3つ目の「ロケーション」とは、データやアプリケーションが格納されている場所を意味する。こちらもビジネスのグローバル化が進むと、徐々に問題が大きくなっていくことがわかる。例えば、日本のシステムに格納されたデータを、遠い国・地域から参照する場合、通信環境の劣化で実用に耐えないケースもある。世界中の地域から、誰もが同じようにアクセスできる環境こそ望ましい。

 マイクロソフトの技術はあまりに多様で、これら3つの壁を壊す要素も幅広い。本稿では、その中から先端技術を含めたいくつかの技術やソリューションについて紹介しよう。

グラフデータ構造でデバイスの差を乗り越える

 ツールの壁を取り払う技術の1つとしてあげられるのが、「Microsoft Graph API」だ。

 これは、いわゆる「グラフデータ構造」を扱うための技術で、旧来の階層型ではなく、個々の要素が複雑に絡み合うようなデータも適切に表現することができる。例えば、ネットワーク構造はグラフとして表現できる。

 グラフデータ構造を用いることで、人と人とのつながり、人と場所・役割・アクティビティなどが結びついたデータを活用できるようになる。例えば、名刺にSNSへの投稿やアクティビティなどの情報がつながれば、CRMの価値をより高めることができるだろう。

 Microsoft Graphの前身であるOffice 365 Unified APIは、従来のオンプレミスのOfficeからクラウドのOffice 365へと舵を切る際に、データを扱うための最適なアーキテクチャとして選択された。現在は、Dynamics 365への統合が進められているところで、従来のOfficeツールやSkype、Microsoft Forms、すでにグラフ構造を採用しているLinkedInなども取り込まれていくとのことである。

 より身近な例をあげてみよう。PCで閲覧しているドキュメントやWebページを、モバイルでも利用したいと考える。従来は、テキストやURLをメールに貼り付けて、自分自身に送信するなどの面倒な“工夫”が必要だった。そこで、Microsoft Graph APIをキーボードアプリに組み込むことで、Windows→iOSなどの環境でも簡単にテキストをコピー&ペーストできるようになる。

 「私たちは、異なるデバイス間で生じるUXの差異をOSレベルで吸収する『Project Rome』において、Microsoft Graph APIを中核技術に据えています。2017年5月に米国シアトルで開催されたMicrosoft Build 2017では、ユーザーのデバイス情報の取り込みにも対応し、アクティビティを活用できるようになることが発表されました。これは、2017年秋にローンチするFall Creators Updateに組み込む予定です」(榊原氏)

グローバル戦略に必要な言語という武器

 言語の壁を取り払うのは、「Microsoft Translator」だ。最先端のAI/ディープラーニングの技術を取り入れ、極めて強力な翻訳・通訳システムへと進化している。

 従来の統計的機械翻訳は、大まかに言うと、大量の対訳データを覚えさせることで、自動的に翻訳ルールを作成して重要度を推定するという技術である。精度の高い翻訳を行うためには、膨大なデータと時間が必要だった。

 ディープラーニング技術を活用することで、学習速度が極めて高速化され、非常に高い精度で翻訳することが可能になった。

 「Microsoft Translatorは、テキスト入出力は60か国語、音声出力は18か国語、音声入力は10か国語に対応しています。日本語を話す人は、すでに9か国語(※)を話す人々とリアルタイムに会話できるのです。音声をテキストに変換するのであれば17か国語の人々と、筆談であれば59か国語の人々とコミュニケーションを取れるということです」(榊原氏)

※英語、中国語(マンダリン)、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語、ロシア語、アラビア語

 Microsoft Translatorは、単なる翻訳・通訳ツールだけでなく、すでにビジネス現場で活用できる機能も提供されている。「Microsoft Translator live feature」という機能では、同時に100人のユーザーがログインして翻訳・通訳を利用することができる。

 例えば、観光ガイドが外国人観光客に名所を説明する場面を想像してほしい。通常は、英語や中国語など、ユーザーの多い言語を選択的に利用するほかなく、不慣れな言語に戸惑う参加者もいたはずだ。

 そこで、Microsoft Translator live featureを用いると、日本語のガイドを各国の言語に同時に通訳・翻訳できるようになる。観光客はモバイルデバイスを持って参加して、ロシア語でもフランス語でも、母国語で解説を聞いたり読んだりできるというわけだ。

 「この機能は、Microsoft Translator PowerPoint アドインとしてプレビュー版が登場しています。外国人が参加するセミナーでも、苦手な英語を使う必要はありません。日本語のプレゼンテーションが、参加者の手元のデバイスで自動的に翻訳・通訳されるのです。スペイン語のプレゼンテーションも日本語で聴講できます」(榊原氏)

 榊原氏によれば、Microsoft Translatorは、Microsoft EdgeやSkypeなどの言語が必要なすべての製品に統合していくとのことだ。

各国のユーザーとコラボレーションする世界

 時や場所の制約は、さまざまな技術と製品がカバーしていく。例えば、Microsoft SharePointやMicrosoft OneDrive、Microsoft Teamなどのコラボレーションツールの強化があげられる。

 Microsoftのツールが特長的であるのは、各アプリケーションから他のアプリケーションを呼び出せるようになっており、いちいち切り替えて利用する必要がない点である。TeamからOneDriveを利用したり、SharePointにTeamのインタフェースが統合されていたりと、アプリケーションを意識しない使い方が徹底されている。

 Skypeでビデオ会議を行いながら、ドキュメントをやり取りし、あとからメッセージで補足するなどといった複雑なコラボレーションも、スムーズに利用することができる。このアーキテクチャは人を選ばず、誰でも容易に高度なコミュニケーションを実践できるというメリットがある。

 場所の壁を取り払うソリューションとしては、「Azure Cosmos DB」にも注目だ。これは、リージョンをまたがってグローバルにスケールできるデータベースであり、極めて高い可用性と世界各地で最適なパフォーマンスを得ることのできる技術である。高いサービスレベルを維持することも、グローバル戦略には必要だ。

 このほかにもマイクロソフトは、ホワイトボードを共有してチームワークを強化する「Microsoft Surface Hub」、VRとARを融合したMR(Mixed Reality)をいち早く実現する「HoloLens」など、すでにビジネス現場で応用できるデバイスの提供も開始している。こうしたビジネス向けハードウェア群にも注目していきたいところだ。

 マイクロソフトの優位点は、こうしたさまざまな技術分野で有用な結果を提示している総合力にある。そして、その多くがMicrosoft Dynamics 365へと統合されていく。

 「特にマイクロソフトのAI技術は、エージェント、ボット、API、機械学習環境、フレームワークといったすべての分野で、著名なベンダーと熾烈な首位争いを行って、互いに技術を磨き上げています。そのほかの分野でも、トップクラスの投資と研究を行い、実用化に向けて進化を続けています」(榊原氏)

 私たちが遠い過去に夢見た世界は、すでにMicrosoft Dynamics 365の中にあるのだ。

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