マイグレーション/モダナイゼーション

レガシーERPからの移行5つのポイント

昨今のERP(Enterprise Resource Planning)は、レガシーERPの課題を解決するべく柔軟性を合わせ持ったり、アドオン開発を抑制することで初期投資や維持費を減少させる方向で拡張されています。また、クラウドの台頭により大企業だけではなく中小企業にとっても重要な基幹システムとして注目されています。

調査会社ITRの最新レポートによれば、2015年度から2016年度にかけて市場規模は9.3%増と堅調な伸びを見せており、2017年度実績はさらに11.7%増になると予測しています。注目すべてきはSaaS市場です。2016年度は売上ベースで前年度比44.2%増となっており、2021年度にはSaaS市場がERP市場の45%に達すると予測されています。

ただし、新しくERPを導入する場合と、既存のERPをリプレース(刷新)する場合とでは様相が少し変わっているのが近年のERP市場の特徴です。従来におけるERPシステムの移行では、既存ERPが提供する機能を踏襲していることを前提にします。要するに既存ERPでできていることは、新ERPでもできるというのが当たり前だったのです。

しかし近年では、既存ERPにこだわらず将来的な成長戦略やリスクに対応できるように、柔軟かつ拡張性の高い未来志向型のERPを導入したいという要望が強くなっているのです。特にビジネスの最前線に立つ事業部門ユーザーからは、次世代のビジネスを生き抜くための「モダナイゼーション(近代化)が必要だ」という声が大きくなっています。

Microsoft Dynamics 365概要

古くなったERPはなぜ「レガシー(負の遺産)」と呼ばれるのか?

日本でERPの普及が始まったのは2000年代に入ってからであり、ERPと従来の基幹システムが決定的に違う点は以下の2つです。

  • ERPは複数の部門にまたがって構築される統合型基幹システムである
  • ERPはパッケージソフトウェア型の製品である

当時は汎用機やオフィスコンピューターよりも安価な「クライアント/サーバーシステム」が登場したことで、ERPパッケージへのニーズが急増していきます。そして国産ERPパッケージが登場し始めて導入費用が抑えられたころから、日本のビジネスにERPが根付くようになります。

日本企業のERP導入では「管理会計機能を重視する」「アドオン(追加開発)やカスタマイズが多い」という2つの特徴があります。欧米でも管理会計機能を重視するのは同じですが、ERPは基本的にトップダウンで導入を決行し、ERPパッケージの標準機能をそのまま使用するというのが一般的でした。しかし日本企業は、ERPパッケージの標準機能に手を加え、操作性や不足機能を追加するというスタイルが大半だったのです。

アドオンとカスタマイズを繰り返していきつくのは、ERPのシステム肥大化・複雑化です。そして急速に変化するビジネス環境へ次第に対応できなくなり、企業にとっては新しい事業編成の足かせになったり、ベンダーロックイン・バージョンロックインの原因になったりして、成長の妨げになります。

こうした古くなったERPは「レガシー(負の遺産)」と呼ばれるようになり、ERPのリプレースを急ぐ企業はレガシーERPを清算したいという背景から、既存ERPを踏襲するのではなく新しいERPの構築へ積極的になっています。

レガシーERPから移行する際のポイント

これまでレガシーERPを稼働し続けてきた企業にとって、次世代ビジネスに対応するようなERPを新しく構築することは簡単ではありません。同じERPとはいっても、従来とはまったく違ったシステム環境を構築することになるからです。ここでは、レガシーERPから移行する際にしっかりと押さえていただきたいポイントについてご紹介します。

1.グループ全体で統合されたシステム基盤である

昨今では日本企業のM&A(合併&買収)が盛んに行われており、ビジネスの変化に応じてグループ会社再編なども活発になっています。日々激しく変化するビジネス環境において高い柔軟性を持つためには、グループ全体で統合されたシステム基盤が必要になります。グループ全体から意思決定に必要な情報をタイムリーに入手することや、会計にとどまらず販売・購買・生産・在庫といった幅広い業務情報を入手する仕組みは、ERPをリプレースする大きな意義になります。

2.コーポレートガバナンス強化の手段になる

月次決算情報を集計して、連結決算を行っている企業は多いでしょう。しかしながら、近年では大企業のグループ会社や海外子会社における粉飾決算などが相次いでおり、コンプライアンスの重要性が益々増しています。こうした問題を発生させない仕組みとしてもERPは有効です。国内拠点・海外拠点の業務内容を本社で詳細に把握でき、粉飾を見抜くための手段になりますし、ERPではデータの整合性が保たれるため監査部門は会計情報におけるデータやログの追跡が行いやすくなります。従って、リプレースする新ERPはコーポレートガバナンスを強化する手段でなくてはいけません。

3.物理的なインフラを持たない

必須ではないものの、新ERPへリプレースするにあたって必ず押さえておきたいポイントが物理インフラを持たない「クラウドコンピューティング」を採用することです。ネット上に用意された仮想的なインフラ環境では、大規模なERPパッケージに必要なリソースを瞬時に調達することができますし、物理サーバーの購入やネットワーク整備といった煩雑な作業が不要になります。さらに、クラウドコンピューティングをベースにしたパッケージソフトウェア製品の「クラウドERP」を採用すれば、利用に必要な契約さえ結べば即座にERPを移行させることが可能になります。もちろん、既存のオンプレミス環境を継続する方が、メリットが多い場合もあるため、移行の際は十分な検討が必要です。

4.標準機能を採用して高い柔軟性を手に入れる

日本企業の多くがレガシーERPを作ってきた大きな原因が、大量のアドオンとカスタマイズです。実は、現代でもアドオン及びカスタマイズを大量に行い、新しいレガシーERPを作り出そうとしている企業は少なからず存在します。従って、これまでレガシーERPに悩まされてきた企業では、ERPが持つ標準機能を極力採用し、激しいビジネス環境の変化にも対応できるような柔軟性を手に入れることが肝要になります。また、ローコーディングやノンコーディングに対応できるようなDynamics 365のようなERPを導入すればカスタマイズ部分のバージョンアップは全て保証されるだけでなく必要に応じて自社独自のプロセスの導入が可能になるため、そのようなERPの導入をすると良いでしょう。

5.グローバル対応のERPを導入する

大企業だけでなく中堅・中小企業においてもビジネスのグローバル化は待った無しの状況です。そして、多くの企業が海外に販路を拡大したり、生産拠点として活用したりしています。今は海外は関係ないという企業も将来はその可能性は高いと言えるでしょう。そのような場合には最初から海外対応のERPを選定しておくことが重要です。通貨の問題や言語の問題、為替、税制などあらゆる面で対応できる物を活用することで、比較的簡単に海外への展開が可能になります。

細かいポイントを上げれば他にもたくさんありますが、ひとまず以上5つのポイントを押さえた上で、ERPリプレースについて検討してみてはいかがでしょうか。

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