働き方改革関連法案について企業が知っておきたいポイントを解説

 2019.11.11  BizApp チャンネル編集部

官民一体となって取り組まれている働き方改革。この言葉がメディアで取り上げられるようになってから久しく、認知度は大きく広がりました。日本マーケティングリサーチ機構が2019年9月30日の発表した『働き方改革に関する意識調査』の結果によれば、「働き方改革というワードを聞いたことはありますか?」という設問に対し、85.96%の人が「はい」と回答しています。このことから広く認知されていることがわかります。

ところが、「働き方改革でどう変わるか内容を知っていますか?」という設問に対しては、「完璧に理解している」「だいだい理解している」と回答した人の合計は49.75%であり、半数以上の人が働き方改革の実態を理解していないことになります。ちなみにこの調査は同年7月、全国20代~70代の男女1,574人を対象にインターネットアンケート形式で行われました。

こうした状況の中、働き方改革を実現するための具体的な法令を盛り込んだ「働き方改革関連法案(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」が2019年4月より施行され始めたことは皆さんの知る通りです。労働基準法にも大きな変革をもたらしたこの法案の実態を、皆さんはどこまで理解しているでしょうか?

本稿では、「働き方改革関連法案ってなに?」という方に向けて、企業が知っておきたいポイントをご紹介します。

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働き方改革関連法案の柱「時間外労働の上限規制」

今回の法案施行において、すべての企業に関係があり、かつビジネスインパクトが大きい法令といえば「時間外労働の上限規制」です。従来の労働基準法では、使用者が従業員に課す残業時間に対し、具体的な規定はあったものの、それ以上の残業時間を課すことは簡単であり、度が過ぎた時間外労働によって体調を崩したり精神を病んでしまったりする人が相当数存在していました。この社会的問題に終止符を打つために立てられた柱が、「時間外労働の上限規制」です。

労働基準法では、1日8時間以上、1週間で40時間以上の労働を禁止しており、これを超えて労働させる場合は月間45時間未満、年間360時間未満という規定が設けられています。しかし、労使協定によって規制以上の残業時間を課すことが可能であり、これらの規定以上の時間外労働ができてしまうという問題がありました。

働き方改革関連法案によってこの法令が改正され、既定の残業時間(月間45時間)を超えて労働できるのは年間6ヵ月までとされ、1年間の上限を720時間、さらに月間100時間未満、複数月間平均80時間未満という規制が施行されています。つまり、労働基準法の月間45時間/年間360時間という時間外労働の規定が、より明確になったということです。

企業がこれに違反した場合、「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。

「時間外労働の上限規制」がビジネスにもたらすもの

2019年4月より大企業を対象に適用され、中小企業は1年間の猶予を経て翌年4月に適用が始まります。この法令がビジネスにもたらす効果は、決して良いものばかりではないようです。

時間外労働の具体的な上限規制ができたことから、現在この規定を超えて残業時間を課している企業は「残業時間削減」へ取り組む必要があります。しかし、残業時間は減らせても、業務量まで減らすことは難しいでしょう。業務量を減らせば当然利益も減るので、削減を決断できる企業は非常に稀かと思います。

ここで想定されるリスクは、残業しなければ無くならない業務量を前にしても残業申請が認められなくなり、休憩時間や始業前の労働が暗黙的に強いられることや、自宅での持ち帰る残業が発生することです。経営者はこのことをよく理解する必要があります。

休憩時間や始業前に労働するとなると、従業員のフラストレーションは当然溜まっていきますし、心身共に疲れが蓄積していきます。もちろん残業代など出ないので、不満は溜まる一方です。これにより起こるのは「労働生産性の低下」だけでなく、「離職率の上昇」も考えられます。

日本においても、現在では横へのキャリアパスが認められているので、従業員はより良い職場環境を探して「転職」を意識するようになるでしょう。そうした従業員を引き留めることは大変難しく、優秀な人材を失い人材難に陥る危険性があります。

また、自宅への持ち込み残業というのはセキュリティ面で大きなリスクがあります。USBメモリやノートパソコンに業務データを保存して持ち歩くと紛失や盗難の危険性がありますし、自宅コンピューターがウイルスに感染している場合、そこから社内システムが感染する可能性もあります。一度情報漏えい事件が起きてしまえば、「時間外労働の上限規制」どころの騒ぎではありません。

このように、企業やその従業員にとって必ずしもメリットばかりではないのが働き方改革関連法案です。

「時間外労働の上限規制」を攻略するポイントは?

働き方改革関連法案には複数の法令が含まれていますが、当面の課題は「如何に残業時間を削減するか?」なので、このまま話を進めていきます。

労働基準法では規定の残業時間を超えた場合、厚生労働省からの注意勧告が入るだけだから、「時間外労働の上限規制」を気にする必要はないのでは?という意見もありそうですが、前述のように明確な罰則がある以上、法令に従う必要があります。違反した場合、罰則が科せられるだけでなく政府ホームページで違反企業が公表される可能性もあるため、企業価値を下げないためにも無視はできません。

そこで「時間外労働の上限規制」を攻略するポイントとして提示したいのが、「IT活用による業務効率化」です。要するに、今まで使ったことのなかったITツールを導入して、劇的な業務効率化を目指して業務量をそのままに残業時間を削減する、という取り組みです。

ITツール導入はコストがかかるという理由で敬遠していた企業も多いでしょうが、導入にかかる費用と、無理な残業時間規制によるリスクとを天秤にかければ、どちらの方がトータルコストが低いかは明白です。

しかも、政府は働き方改革や労働生産性向上を目的としたITツール活用を支援する助成制度を設けているため、これから「時間外労働の上限規制」に取り組んでいく企業にとって追い風になります。

確かにITツールには導入コストがかかりますが、ITツール無しで実践する業務効率化とは効果が格段に違います。従業員のフラストレーションが溜まらず、セキュリティリスクが生まれないだけでなく、ITツール活用によって向上した生産性で、より多くの投資ができるようになります。

いかがでしょうか?本稿では「時間外労働の上限規制」という狭い分野に焦点を当てて働き方改革関連法案についてご紹介しましたが、やはり当面の課題は残業時間削減です。2019年4月の適用を待っている中小企業では、自社の労働環境を改めて整理して、「時間外労働の上限規制」への対応策を考えていきましょう。

「働き方改革」に踊らされない働き方改革とは

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