急激に進む製造業のサービス化、モノからコトへの転換とは?

 2020.03.30  BizApp チャンネル編集部

いきなりおかしな質問ですが、モノを欲しがっている人が本当にそのモノが欲しいと思いますか?実は違います。マーケティングにおいて「ドリルを買う人は穴を欲しがっている」という格言があります。これは1968年に出版されたセオドア・レビット博士の著書の冒頭で登場した文章です。正しく引用しますと、「昨年、1/4インチサイズのドリルが100万個売れたが、これは人々が1/4インチサイズのドリルを欲したからではなく、1/4インチサイズの穴を欲しがったからである」というものです。

近年製造業において急速に進んでいるサービス化(サービタイゼーション)の意義を表す言葉として、これ以上最適なものはないでしょう。本稿では、サービス化によるモノかコトへの転換とは何なのか?できる限り分かりやすく解説していきます。

急激に進む製造業のサービス化、モノからコトへの転換とは?

製造業のサービス化は至極当然の流れである

現代は、モノが売れない時代だと言われています。今ほどモノと情報が溢れていない時代では、市場は売り手側に有利な状況であり、消費者・企業は事業者が一方通行的に発信する情報を頼りに商品を選択します。また、多くの市場は一部企業の寡占状態にあり、消費者・企業にとっての選択肢はかなり限られたものだったのです。

時代が流れ、パソコンが一般家庭に普及してインターネット(Web)が整備され、徐々に情報が流通していきます。それに伴いさまざまな技術の標準化と商品のコモディティ化が進んだことで、モノと情報が溢れる時代になりました。今では、インターネットを活用してあらゆる情報を検索し、口コミを確認しながら商品を選択して、自分・自社にマッチした商品を消費者・企業自ら選ぶことができます。

モノが売れない時代だと言われている理由は、企業都合に情報を発信することが不可能となり、さらに消費者・企業のニーズが多様化したことで良いモノを作るだけでは激しい競争を生き残れなくなっているのです。その最中、突如として注目され始めたのが商品のサービス化、モノからコトへの転換でした。

これは従来モノとして販売してきた商品を、コトとしてサービス提供する転換を意味します。例としては英ロールス・ロイス社が提供しているPower by the hourというサービスがあります。

英ロールス・ロイス社はエアバスやボーイングといった主要航空機のエンジンを長年製造しています。ところが同社はそれらの航空機エンジンを販売するだけでなく、サービスとして提供してもいるのです。航空機エンジンに取り付けたセンサーから出力時間などを計測し、分析を通じて推進力を測定します。その上で、推進力に応じた料金を徴収するサブスクリプションビジネスがPower by the hourです。

冒頭で紹介した「ドリルを買う人は穴を欲しがっている」を当てはめるのならば、「航空機エンジンを買う人は推進力を欲しがっている」と言えます。この言葉を見事に具現化したのが英ロールス・ロイス社のPower by the hourなのです。

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日本でも始まった製造業サービス化時代

日本の製造業サービス化時代の元年がいつかと聞かれれば、それは2019年でしょう。昨年は製造業からさまざまなサブスクリプションビジネスが展開され、話題になったことが記憶に新しいかと思います。

直近で話題になったサービスといえばトヨタ自動車のKINTOではないでしょうか?KINTOは愛車サブスクリプションサービスであり、頭金0円、月々定額で新車に乗れるというものです。一般的なレンタカーと異なる点は、保険料やメンテナンス料がすべて込みであることです。ボーナス払いを含めれば月々1万4,410円から新車に乗ることができます。高級車ラインナップであるレクサスも新車で乗れることから話題を集めています。

この他にもさまざまなサブスクリプションビジネスが多違っています。MECHAKARIは洋服レンタルサービスであり、新作新品アイテムを返却期間無く何度でも借りられます。気に入った洋服は60日間借り続けると自分のものにできるなど、独自のサービスを展開しています。

ダイソンが始めたDyson Technology+は、掃除機や空調家電などダイソン家電を自宅で仕様できるサブスクリプションビジネスです。月々1,000円からダイソン家電を使用でき、手軽に製品の魅力を体感して製品購入にあたって具体的な検討を進めることが可能となっています。

このように、日本の製造業ではサービス化が急速に進んでおり、その背景には前述のように消費者・企業のニーズ多様化や市場の飽和状態などが関係しています。

製造業がサービス化に取り組むメリットとは?

サービス化の潮流が大きくなっているのは、サブスクリプションビジネスが受け入れられているだけではありません。実は、モノからコトへ転換することで、企業がこれまで集めるのが難しかった商品の利用データや顧客データを効率良く収集し、それを製品・サービス改良に大いに役立てられるからです。

ビッグデータ解析がビジネスの明暗を分けると言われている現在、企業は以下に効率良くあらゆるデータを収集するかが重要となっています。手元にあるデータを分析するのは簡単です。問題は、分析にという必要なデータを以下に集めるか?なのです。

Googleはインターネット上で多種多様な無料サービスを展開することで、ビッグデータという言葉では表現しきれないほど膨大な利用データを収集し、それをAI開発やOS開発、サービス改善等に役立てています。つまり、モノを販売するよりもサービスとして提供する方が、効率的かつ簡単に利用データや顧客データを集められます。

これにより、サービス提供⇒利用データ・顧客データ収集⇒ビッグデータ解析⇒問題点・新事実の発見⇒サービス改善⇒利用者数アップという正のサイクルを生み出すことが可能になります。こうしたサイクルは今までソフトウェア業界でのみ許された特権だと考えられていましたが、製造業のサービス化が始まったことであらゆる産業へとこのサイクルが拡大しています。

製造業サービス化を成功させるUXマネジメント

今までサービス化に取り組んでこなかった製造業では、消費者・企業のUX(User Experience:ユーザーエクスペリエンス)を意識したサービス設計を経験したことがないでしょう。ちなみにUXとは製品・サービスを通じて顧客が得る体験のことであり、サブスクリプションビジネスでは以下にUXを改善するかに重点が置かれています。

ただしUXを構成するのは製品・サービスだけではありません。サービスを利用するまでに至って経路、それまでに設けられた企業と顧客の接点、サービス利用後のカスタマー対応などすべてが含まれます。このUXを総合的に管理するUXマネジメントを戦略的に実施することこそが、製造業がサービス化を成功させる大きなポイントになります。

製造業サービス化は中小企業にとって救いの手になる可能性の高いビジネス戦略でもあります。積極的にサブスクリプションビジネスを検討し、自社製品のサービス化の道を模索してみてください。

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