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事業投資とは何か? 基本的なパターンや投資プロセスを解説

事業投資の究極的な目的は企業の事業ポートフォリオの成長です。そのためにキャピタルゲイン・インカムゲインの増加を狙うこと、また既存事業とのシナジー効果を狙うことが代表的手法です。
成長の手段である事業投資を企画し、実行する方法については基本パターンがあり、また実行プロセスにもリスクをコントロールするための定石があります。
事業投資を行う場合の基本パターンとプロセスにつき、特にリスク管理の観点から重要なポイントを中心に解説します。

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事業投資とはどのような投資?

事業投資には明確な定義はありませんが、事業への投資によって利益を得る投資方法の一つです。その形式には他社の買収(M&A)、見込み事業への資金投下、株式の購入などさまざまなものがあります。

事業投資はキャピタルゲインを得ること・インカムゲインを得ること・既存事業とのシナジー効果を上げることが直接・短期的な目的であり、手法です。大型の投資案件では投資から出口(EXIT)までをフェーズ化し、計画的に実行することが一般的に見られます。

フェーズごとにキャピタルゲイン・インカムゲイン・既存事業のシナジー効果を上げることのいずれが主眼になるか定められ、出口戦略の実行により最終的に利益を確定させることとなります。

ところで、事業投資計画の立案や意思決定には経営指標となる数字が用いられます。より詳細なデータを集めるため、事業成長率の見込みの算定・税効果の算定・株式価値の算定などが行われ、計画や意思決定の基準とされています。

また、数字だけでなく、多様なリスクが事業に影響を及ぼす現代の経営環境では、定性情報が十分に収集できることも必要です。

事業投資には、適切なデータを集められること・適切に利用できることを確保できる環境が不可欠といえるでしょう。

事業投資の代表的な4パターン

事業投資には、代表的なパターンが4つあり、それぞれ投資を行う主体と対応関係があることが知られています。

すなわち、総合商社・ベンチャーキャピタルまたはPEファンド・事業会社・個人投資家それぞれ投資を行う主体により、投資から出口戦略がパターン化できるのです。

1. 総合商社による事業投資

総合商社は事業投資とトレード、2つの業務を主に行っています。

事業に投資し、継続して事業を保有することを前提とし、投資先企業とのシナジー創出をメインの目的としています。うまく行けばシナジー効果で成長する事業を長期的・安定的に保有でき、配当などの利益を上げ続けることができるのです。

総合商社は、長期的に事業にかかわることを前提とし、人材・資金・情報・ビジネスノウハウなどの経営資源を投入します。

また、事業への関与を原則として前提としつつ、資源や株式・債権などのトレードも行い、長期に投資した事業を支えます。

2. ベンチャーキャピタル・PEファンドによる事業投資

ベンチャーキャピタル・PEファンドも総合商社とビジネスモデルが類似しており、人材・資金・情報・ビジネスノウハウなどの経営資源を投入します。

しかし、総合商社と異なり、出口戦略は比較的短期で実行され、原則としてキャピタルゲインを得てEXITするので、経営資源への投資は限定的です。

ベンチャーキャピタルとPEファンドの違いは、投資対象の違いです。ベンチャーキャピタルは、成長が予想されるベンチャー企業などの非上場会社に出資を行うのに対し、PEファンドは、ビジネスモデルが確立されている見込み企業への投資を行う点が異なっています。

3. 事業会社による事業投資

総合商社のように事業投資をメインに行うのではなく、事業拡大の一手段として行うのが事業会社による事業投資です。

企業と既存事業のシナジー効果を得ること、海外企業の買収による取込利益の獲得などが目的とされます。そのため、投資からのキャッシュによる配当を主に見込む商社の投資と異なり、BS/PLレベルでのインカムゲインの獲得をめざします。

4. 個人投資家による事業投資

個人投資家による投資は株式の購入と事業投資があります。事業投資は、企業の事業に直接出資をして、対価として株式を得ることとなりますが、非上場企業に対するものが中心です。

創業間もないベンチャー企業・価値のある事業を持った企業の再建が必要になること・今後の成長が見込める個別事業が登場したこと・まだ計画段階にある研究開発の後押しなど、事業投資のきっかけはさまざまなものがあります。

個人投資家の中には小口の投資家もいますが、資金力のある個人富裕層や元企業経営者や実業家など、「エンジェル投資家」と呼ばれる大口投資家が個人による事業投資の主なプレーヤーです。

効果的な4つの事業投資プロセス

どの事業投資パターン によるものであっても、事業投資のプロセスはほぼ共通しています。共通のプロセスを適切に実行するとリスクを最小限にし、収益を最大化することが可能なのです。そこで効果的な事業投資を実現するために、ポイントとなるプロセスを解説します。

1. 経営計画に基づいた投資案の作成

まずは、プランニングの段階が重要なポイントです。中期経営計画での事業投資戦略や自社の成長戦略を策定し、事業ポートフォリオの最適化を行います

既存のポートフォリオと、投資をした場合の差分を数字で把握し、経営陣が効果的でないと判断したら、その投資は中止または修正する判断をすることが必要となるでしょう。

また、投資による事業計画の妥当性を評価・検証するためには、投資の意義づけやその後の実行プロセスは、検証に耐えられるようできるだけ具体的で明確であることが必要です。

さらに、計画における予算編成を見直し、投資案件の優先順位を定めておくことも投資案の作成のポイントの一つといえます。予算編成は、他の事業との兼ね合いで調整が必要になることもありますが、あらかじめ優先順位をつけておかないと判断がぶれてしまうことがあるのです。

他の事業に振り向けるはずの投資を本当に検討対象となる投資に振り向けることが適切か、判断がぶれないようにするためには、あらかじめ順位をつけておくべきといえるでしょう。

2. 事前評価による投資判断

定量・定性の両面から投資判断をするための事前評価を行います。

リスク分析は、財務関連の数字が重要なことはいうまでもありませんが、例えば地理的要素・事業が依存している資源の状況・コンプライアンスリスクなどの定性面でのリスクがコントロールできないと致命傷を負うことがあります。

そこで、投資によるリスクの想定と低減のための対応策を策定するなど、リスク分析を行うことが必要です。不確実性は可能な限り可視化し、投資が必要か否かの判断を行うこととなります。

3. 投資実行と事後モニタリング

投資は実行後のモニタリング・評価がリスク管理のための重要ポイントとなります。実行の巧拙も問題になりますが、経営環境の変化は短期間で訪れるので、機敏に対応するためには、事後モニタリングが不可欠です。

事業投資を実行し、投資回収状況やリスク発生状況についてのモニタリングを行い、計画との差分を把握することが最低限必要と考えられます。

ところで、事業が順調に拡大すると、社会的な影響力・レピュテーションに関するリスクも大きくなる傾向があるのです。そこで、定性面でのリスクの発生状況は事業が拡大したらより慎重に行う必要があります。

したがって、計画との差分の分析もまた定量面・定性面双方について行う必要があり、差分はマイナス・プラスの価値判断をいったんおいて双方とも上げておくべきでしょう。

さらに経営データを詳細に分析・検証した結果、追加投資方針や事業方針の調整・修正も必要な場合が生じるのです。

4. EXIT戦略による見直し

計画修正や追加投資など、EXIT戦略(出口戦略)を実行する際には当初の計画と異なる手段をとることにより投資の効果を最大化し、マイナスを最小限にすることができることがあります。

低効率の資産や保有意義が薄れた事業を見直し、インカムゲインに見切りをつける、逆により成長が見込めることとなった事業については保有方針を長期に変更するなど、EXIT戦略も変化に応じて柔軟に対応する必要があります。

まとめ

事業投資には、基本的なパターンがあり、また、プロセスには定石があります。具体的で明確な計画・実行中に生じた計画との差分のモニタリングと分析・変化に応じてリスクコントロールのため計画の修正・調整を行うことなど、ポイントは共通しています。

これらのポイントを外さないようにして、定期的なチェックと適切な意思決定を行うには、基礎となる経営データが不可欠です。

データを正しく集められる環境にあるか・情報収集が十分にできるのか、リスクを可視化するために足りなければ補う必要があります。事業投資の前には経営データを確認できる環境が何よりも必要といえるでしょう。

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