レガシーマイグレーションとは?その手法や進め方について

 2021.02.26  BizApp チャンネル編集部

現在、多くの日本企業では数十年前に構築された「レガシーシステム」の使用が問題として挙げられています。世界と比べると日本のシステム改修は遅れており、このままだと企業経営だけでなく日本経済への影響も懸念されています。そこで、この難局を乗り切るために必要な「レガシーマイグレーション」について、詳しく解説します。

レガシーマイグレーションとは?その手法や進め方について

レガシーマイグレーションとは?

「レガシーマイグレーション(Legacy Migration)」とは、古くなったシステムを新しいシステムに移行することです。何十年も前に構築した企業の基幹システムやオンプレミスサーバーといった「レガシーシステム」を、新しいシステムにマイグレーション(移行)するのです。

レガシーシステムに明確な定義はありませんが、「COBOLを使用した基幹システム」や「メインフレーム」自体をレガシーとするのが一般的です。また、現在の経営でシステムが足かせとなっていたり、新しいシステムにレガシーシステムがそぐわなかったりする場合にも、レガシーシステムと呼ぶことがあります。

IT関連の技術は年を追うごとに変化しており、昔に設計されたものを運用し続けるには限界があります。そのため、システムを刷新するのは当然の流れといえます。しかし、システムのマイグレーションにはコストや期間が必要となるため、実施は容易ではありません。

さらに、システムのブラックボックス化という問題もあります。一昔前のシステムは、その都度システムを追加することも多く、内部が複雑化していることがよくあります。そうなると、システムの中身を担当以外の人間が理解することが難しくなってしまい、システムの移行が容易ではなくなるのです。

こうした問題から、企業によってはすぐに移行ができない可能性もあります。しかし、なるべく早くシステムマイグレーションを行わないと、さまざまな問題が起きてしまうのも事実です。

レガシーシステムを移行・刷新が必要な背景

レガシーシステムの問題点は、経済産業省がまとめた「DXレポート」の中で提起されています。DXレポートは、デジタルトランスフォーメンション(DX)を推進するためのもので、簡単に説明すると「最新のデジタル技術を導入して、経済成長を促進させる」ためのレポートと捉えてよいでしょう。

このレポートでは、レガシーシステムを利用し続けていると、2025年までに日本の経済が停滞すると唱えています。この出来事を「2025年の崖」と呼び、なるべく多くの企業のレガシーシステムをマイグレーションして、DXを促そうとしているのです。

現在、世界では最新システムを取り入れて、新しいビジネスモデルの成功を収めている企業がたくさんあります。たとえば、日本でいえば「ZOZOTOWN」で有名な株式会社ZOZOもそのひとつです。同社はいち早くDXを成功させて、日本の大手企業の仲間入りを果たしています。

このように、最新システムによって新しいビジネスモデルを展開する企業が活躍する中、一昔前のシステムで運用し続けた場合、競争を勝ち抜くことは困難と言わざるを得ません。レガシーシステムは、現在のシステムと比べると運用コストや人的リソースがかかることもあり、これらが企業の足かせとなり得ます。

さらに、2025年までには現在のIT人材の引退や、SAP ERPといった基幹システムのサポート終了なども重なっています。こうした事情から経済産業省は、もしシステムマイグレーションが進まなかった場合、2025~2030年の間に12兆円もの経済的な損失が発生すると予想しています。
(参照元:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf

レガシーマイグレーションを行うメリット

レガシーマイグレーションにはコストや移行期間が必要なため、企業によってはなかなか移行に踏み切れない場合があります。また、システムを刷新したからといって、必ずしも恩恵があるわけでもありません。ただ導入しただけでは、無駄にコストを費やしただけに終わる可能性もあるのです。

そのため、メリットを見出して費用対効果を明確にし、システムマイグレーションを成功させる必要があるのです。マイグレーションでDXを行うには、なるべく下記で挙げるようなメリットが活かせるように実施しましょう。

  • 変化するビジネスモデルへの柔軟な対応
  • システムの運用コスト削減
  • 新技術の利用
  • 現行資産を活かした新システム構築
  • 情報セキュリティの強化

システムマイグレーションのメリットは移行手法によって変わります。もちろん、どのような手法であれ共通して得られる恩恵もあり、「情報セキュリティの強化」や「運用コストの削減」がそれに該当します。この2つを成功させるだけでも費用対効果への成果を実感できるでしょう。

さらに大きなメリットとしては、現行システムに依存していたビジネスモデルからの脱却が挙げられます。新技術を積極的に採用して、全く新しい企業戦略を打ち出すことも可能です。当然この手法にはコストがかかりますが、成功すれば費用対効果では一番大きな成果を上げられるでしょう。

レガシーマイグレーションの移行手法

レガシーマイグレーションを行うには、いくつかの方法が考えられます。それぞれ移行期間やコストに違いがあり、受けられる恩恵も変わるため、自社に合った方法を選択することが大切です。

リホスト

「リホスト」は、現在利用しているアプリケーションシステムに変更を加えずに、プラットフォームのみ変更する手法です。システムを変更しないため、導入期間の短縮や、コストを抑えることが可能です。

リホストの具体的な内容は、Windows ServerやUNIX、クラウドなどオープンなプラットフォームへの変更です。現行システムで使用している言語は、ツールによって変換を行ったり、リライト(別言語への書き直し)したりして対応します。これらの対応が終わったあとは、比較テストを行って終了です。テストにも自動化するツールがあるため、上手く利用すれば、より短期間での導入が可能です。

リホストには、システムが新旧で変わらないという特徴があります。そのため、他企業との差別化を図ってるレガシーシステムを変更したくない企業にとっては、適切な手法です。さらにオープンプラットフォームにすることで、クラウドとの連携なども行えます。

一方、デメリットとしては、レガシーシステム自体に変更がないという点が挙げられます。現行のシステム自体に問題を抱えている場合、それが解消されることなく引き継がれてしまいます。

リライト

「リライト」は、ビジネスロジックは変更せず、使用しているプログラミング言語とプラットフォームだけを変更する手法です。使用する言語が変更できるので、新規OSや情報セキュリティの向上、システムの効率化などが期待できます。

実施内容は言語の変更以外、リホストとさほど変わりません。ただ、リライトの要となる言語の変更に関しては、変更方法によって作業内容が異なります。

変更方法は大きく分けて3つあり、まず1つ目が「現行の構造のままリライト」する手法です。こちらはコストがかからず、現行システムを構築したエンジニアでも可読性の高いシステムとなります。

2つ目は、「オブジェクト指向へのリライト」です。保守性はある程度高まりますが、コストや移行期間が延びるというデメリットがあります。

そして3つ目は、「オブジェクト指向で作成されたビジネスロジック層を、共有・拡張コンポーネントに分割」する手法です。この手法ではアプリケーション構造を再構築できるため、拡張性を広げることが可能となります。反面、上記2つと比べると、コストや期間が一番かかる可能性があります。

このように、実施内容を見てみるとわかる通り、リライトはリホストと比べるとより構築が複雑化します。またデメリットとして、リホストと同様にレガシーシステムのロジックは変わらないので、注意が必要です。

リビルド

「リビルド」は、レガシーシステムを一から再構築する手法です。システム自体がすべて変わるため、ビジネスロジックからすべてを再設計できるという大きなメリットがあります。今のビジネスモデルから脱却したい場合や、新しい試みにチャレンジしたいときには最も適している手法です。

作業内容は他のマイグレーション手法と比べると、より大掛かりになります。まずは、どのようなシステムを構築するのかを企画して、現行システムとの差異をピックアップしなければいけません。そのうえで、新しいプラットフォーム・システム・プログラミング言語で構築を行います。

作業が大掛かりである分、3つの手法の中でも特にコストや導入期間がかかります。とりわけ導入期間は数年に及ぶ可能性もあるため、業務と並行して移行するのは難しいかもしれません。当然、失敗してしまったときのデメリットも大きいため、システム刷新後は確実に成果を上げなくてはなりません。そうした事情から、一番移行が難しい方法といえます。

レガシーマイグレーションの進め方のポイント

コストをかけてマイグレーションしても、「前のシステムのほうがよかった」となっては意味がありません。しっかりと効果を出すためには、現行システムで改善が必要な箇所を探すことが大切です。

たとえば、レガシーシステムには長い事業活動の中で稼働しなくなったシステムや利用しないシステムがあるでしょう。こうした部分を削除することで、無駄なコストがかからず、移行にかかる期間も短くなります。

さらに、マイグレーション手法の選択も重要です。どの手法を選択するかは企業によりますが、場合によっては複数の手法をミックスして行う方法も有効です。たとえば、リライトやリホストを上手くミックスすれば、コストをかけずにリスクのみ軽減できるかもしれません。

また、マイグレーションを実施するタイミングとしては、ハードウェアのリース更新時期が好都合でしょう。切り替えのタイミングとしてわかりやすいため、事前に準備ができるからです。マイグレーションでは、事前の準備が欠かせません。現行システムの課題を見つけて、移行から運用までのプロセスをしっかりと計画しましょう。

まとめ

レガシーマイグレーションは、古くなったレガシーシステムを刷新して、新しい技術を取り入れることをいいます。移行にはさまざまな足かせもありますが、ツールなどを上手く利用すれば、導入期間を短くして一括でシステムを変更することも可能です。自社のシステムを刷新して、IT時代のビジネス競争に乗り遅れないようにしましょう。


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