業務自動化の選択肢としてRPA(Robotic Process Automation)を検討されている方も多いでしょう。パソコン上で行う作業を自動化することによって得られる業務効率化効果は非常に大きく、労働生産性を向上するための一手としても注目されています。
しかし、RPAの導入ではライセンス費用やエンジニア育成といった課題も多く、おいそれと導入できるITツールではない上に、自動化プログラムの作成が特定の人材に集中するというボトルネックもあります。
一方、「Microsoft Power Automate」というITツールをご存知でしょうか?マイクロソフトが提供するタスク自動化ツールであり、クラウドで提供されるため特別なインフラ等は不要で、かつRPAよりも気軽に自動化を実行できます。本稿では、そんなMicrosoft Power Automateの概要についてご紹介します。
Microsoft Power Automateとは?
Microsoft Power Automateは2016年11月にリリースされたITツールであり、マイクロソフト製品を含むさまざまなアプリケーションと連携して「タスク自動化」を実行することができます。リリースから間もなく3年が経過しますが、継続的にアップデートが実施されているため、常に快適かつ洗練された自動化が実行される環境が整っています。
ちなみに「タスク」とは、「メールを受信したら添付ファイルをクラウドストレージに保存する」といった一連の操作を指します。Microsoft Power Automateがどのようにタスクを自動化するかというと、マイクロソフトでサポートされているコネクタ(Microsoft Power Automate製品を含む様々なアプリケーションのこと)を組み合わせ、ユーザーがプログラムした処理を実行することで、タスクの自動化を行います。つまり、Microsoft Power Automateでは、お気に入りのアプリとサービスの間に、通知の取得、ファイルの同期、データの収集などを自動化するワークフローを作成することができるのです。
現在Microsoft Power Automateでサポートされているコネクタは250個以上あり、契約するプランによって組み合わせられるコネクタが違います。コネクタにはGmailやEvernoteといった一般的に普及しているツールから、Microsoft Dynamics 365やSQL Serverのように業務システムに用いられるインフラまで様々なものがあります。
ちなみにMicrosoft Power Automateは、PowerBIやPowerAppsといったMicrosoft PowerPlatformの一部という位置付けになります。
Microsoft Power Automateはどうやったら利用できる?
Microsoft Power Automateはクラウドで提供されているため、利用にはサービス契約が必要です。契約といっても、ホームページにて必要情報を入力し、所定の方法でプラン料金を支払うことで完了するので手間はありません。
Microsoft Power Automateで提供されているプランは大まかに分けて3つあります。無料で使える「Flow Free」、有料で使える「Flowプラン1」「Flowプラン2」です。無料版が用意されているので、まずは試してみることも容易にできるのが敷居を下げてくれるでしょう。
Microsoft Power Automateのプラン
Flow Free |
Flow プラン1 |
Flow プラン2 |
|
月額料金 |
無料 |
$5.00 |
$15.00 |
月間の実行数 |
750回 |
4,500回 |
15,000回 |
フローの作成 |
無制限 |
||
チェック間隔 |
15分ごと |
3分ごと |
1分ごと |
Premiumコネクタ※ |
× |
〇 |
〇 |
※PremiumコネクタとはSalesforceやOracleなどの基幹業務サービスに接続する
Flow Freeは無料で使えるため、Microsoft Power Automateをお試しで使ってみたい方や、個人的に利用するため多くの自動化を必要としない方におすすめです。高度なタスク自動化は難しいですが、簡単な自動化を実行してMicrosoft Power Automateの使用感を確かめることができます。
Flowプラン1とFlowプラン2の違いは主にタスク自動化の実行回数や、チェック間隔にあります。より多くのタスク自動化を実行したり、チェック間隔を短くしたりしたい場合にはFlowプラン2がおすすめです。
ちなみにMicrosoft Power Automateの課金は円ではなくドルが基準なので、為替レートが変動することで円相場が変わる点に注意しましょう。
Dynamics 365ユーザーは無料でMicrosoft Power Automateが使える!
実は、マイクロソフトが提供するクラウド型のERP(Enterprise Resource Planning)である「Dynamics 365」は、サービス契約することでMicrosoft Power Automateを無料で使うことができます。Dynamics 365に付帯するMicrosoft Power Automateは「Flow for Dynamics 365」と呼ばれ、特徴は以下の通りです。
Flow for Dynamics 365の特徴
- 自動ワークフローの作成無制限
- 1ヵ月あたりの最大実行数2,000回(ユーザー単位)
- フロー最大頻度5分
- 公開ギャラリーで入手できる多数のテンプレートからフローを作成できる
- SLAによるサービス品質保証が付く
- Standardコネクタを使用して一般的なクラウドサービスに接続する
- オンプレミスデータゲートウェイを使用してオンプレミスのデータにアクセスする
- 独自のシステムに接続するためのカスタムコネクタを作成する
- 他のユーザーが所有権を共有してフローを実行できるように招待する
このように、Flow for Dynamics 365はPremiumコネクタの使用を除いては、有料プランとほとんど同じように使用できるのが大きな特徴です。業務プロセスを簡単に構築できるようになることがポイントです。
Microsoft Power Automateを利用するメリット
Microsoft Power Automateのメリットは何か?大きな2つのメリットをご紹介します。
1.単純作業が減る
日常的に発生する単純作業に予想以上の時間を取られて、ストレスが溜まっていないでしょうか?たとえば定期的に届くメールに添付されているファイルを、所定の場所に保存するという作業では少なくとも3分ほどかかります。これが1日の5回も発生すれば合計15分、1年間では3,675分(年間245日労働の場合)も発生することになります。営業日に換算すると7.6日です。実に7回以上も添付ファイルの保存に費やしていると考えればびっくりですね。
この環境にMicrosoft Power Automateがあれば、年間7.6日分の作業時間が大幅に削減されるので、その分の時間を他の作業に充てることができます。
2.ミスが少なくなる
日常的に発生する業務ではよく人為的ミスが発生します。しかし、会計処理などミスが許されない業務の場合は、入念なチェックを繰り返し、神経をすり減らしながら作業を行うため、精神的負担は想像以上に大きなものです。それでもミスが発生するときがあるのが人間です。
Microsoft Power Automateではミスが起こりやすい集計作業などのタスク自動かも実行できるため、それによって人為的ミスを大幅に軽減できます。
このように、Microsoft Power Automateには労働生産性を向上するための大きなメリットがあります。労働生産性といえば昨今の日本企業が課題としているものであり、OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本は主要先進7ヵ国中、数十年も再開となっています。Microsoft Power Automateはその労働生産性の一定になるITツールです。この機会に、ぜひMicrosoft Power Automateをご検討ください。
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